忘れられない通じ合った瞬間

ミニカーのタイヤやおもちゃ、ごみ箱や本まで、なんでも回して遊ぶ子でした。当時ベビーラックのタイヤを回して遊んでばかりで、他の物で遊ぼうと誘っても無視され、うまく関われずにいました。

おもちゃを「おもちゃらしく」遊んでほしい私は、あれこれ必死に誘うもののすべて振られ、落ち込む毎日でした。初めて相談した臨床心理士の先生に「お母さんも自分の趣味を否定されたら嫌でしょう。ゆっくり高嶺の花を落とすように関わってみては」と言われ、彼の隣りでベビーラックのタイヤを回して遊んでみました。すると、彼はハッとして顔をあげ「同じ趣味の方?」と言わんばかりに私の顔を見ました。

その時あんなに合わなかった視線がパチンと合い、初めて通じ合ったと感じた瞬間でした。そこから、タイヤにシールを貼ったり、わざと邪魔したり同じタイヤを回したりしているうちに、一緒に楽しめるようになり、目も合いやすくなり、少しずつ私が提案するおもちゃでも遊んでくれるようになりました。

のちに知った映画「1/4の奇跡」の中では自閉症の原田大介さん(大ちゃん)が書かれた詩『ほんとに仲良くならんと目なんて合わせられん』が紹介されていて、なるほどなぁと思いました。また自閉症の作家東田直樹さんの著書の中には回転するものの美しさに魅了される様子が書かれてあり、息子もそうだったのかなぁとすごく納得できました。